生前贈与・認知症対策

相続と贈与どちらが得か

生前贈与とは、被相続人が死亡する前に、自分の財産を人に分け与える行為です。個人の財産は、各個人の意思により自由に処分できるのが原則です。また生前贈与は、将来負担すべき相続税を抑えるという目的のために利用されます。

生前贈与の注意点

生前贈与の際の注意点として、次の4点を確認する必要があります。 

  1. 贈与税と相続税の節税額の分岐点を確認しておくこと
  2. 遺産分割のトラブルとならないように注意すること
  3. 贈与契約書を作成し公証人役場で確定日付を取っておくこと
  4. 相続開始前3年以内の相続人に対する贈与は相続財産として加算されることを確認すること
  5. 相続時精算課税精度を活用する(後述)

次に実際の生前贈与のやり方を見てみます。贈与税は暦年課税で、1年間に基礎控除額が110万円です。

つまり、年間で110万円以下の贈与については課税されず、申告も不要ですので、一番シンプルな生前贈与の方法だといえます。

生前贈与を活用した節税対策には、110万円の基礎控除を最大限利用することのほかに、配偶者控除を利用する方法があります。

条件は、婚姻期間20年以上の配偶者からの贈与であることと、居住用不動産または、居住用不動産を取得するための金銭の贈与であることです。
2,000万円まで課税価格から控除できます。

相続税は、5,000万円×法定相続人数という基礎控除や、配偶者税額軽減などの措置が取られているために、かなり多額の遺産総額の見込みがないと発生しないので、生前贈与などが税制上効果を生むケースはごく少数といえるかもしれません。

一般のサラリーマン家庭においては、生前贈与が相続税対策に役立つかどうかは定かではありません。

というのも、相続税には税金のかからない基礎控除や、配偶者税額軽減などの優遇措置があるからです。相続税対策として生前贈与を活用するには、まず、被相続人の資産状況の把握が必要です。

生前贈与していても実は税金がかからない状況だった、ということになっては意味がありません。この制度がよく使われる場合としては、不動産・土地の相続等、多額の金額が動く時です。

この場合には、専門家にしっかり確認しておいてください。 もちろん、当センターでも経験豊富な専門家がおりますので、まずはご相談下さい。

成年後見の申立て

成年後見制度は精神上の障害(知的障害、精神障害、痴呆など)により判断能力が十分でない方が、不利益を被らないよう家庭裁判所に申し立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。

例えば、一人暮らしの老人が悪質な訪問販売員に騙されて高額な商品を買わされてしまうなどといったことを最近よく耳にしますが、こういった場合も成年後見制度を上手に利用することによって被害を防ぐことができる場合があります。

後見人の役割

財産管理

  • 預貯金による入出金のチェックと必要な費用の支払い
  • 所有不動産の管理
  • 後見費用捻出のための不動産などの売却
  • 管理の必要上、必要であれば訴訟行為を行うこと
  • 確定申告や納税

身上監護

  • 治療、入院に関し病院と契約すること
  • 健康診断などの受診手続き
  • 住居の確保(賃貸借契約)をする
  • 施設などの入退所に関する手続き
  • 施設や病院の処遇を監視し、本人に不利益がある場合は、改善要求する
  • 要介護認定の手続きや介護サービス事業者と介護サービス契約をする
  • 介護サービスが契約どおりか確認し、異なる点がある場合は、改善要求する
  • 教育・リハビリに関する契約をする
  • 訪問などにより本院の状況に変更がないか「見守り」をする

家庭裁判所への報告

  • 1年に一度の収支報告
  • 財産を処分したり、財産管理の方針を大きく変更するとき(遺産分割・相続放棄)
  • 本人の入院先・氏名・住所・本籍、又は成年後見人の住所・氏名が変わったとき
  • 療養看護の方針を大きく変えるとき
  • 本人死亡時の成年後見登記申請
  • 財産目録の作成
  • 財産の引き渡し
  • 終了報告

申立に必要な書類と費用

成年後見制度を利用するには本人の住所地の家庭裁判所に申し立てをする必要があります。 
申し立ての必要な書類と費用はおよそ以下のとおりですが、事案によって多少異なります。

  • 申立書
  • 申立人の戸籍謄本1通(本人以外が申し立てるとき)
  • 本人の戸籍謄本、戸籍の附票、登記事項証明書、診断書各1通
  • 成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、登記事項証明書各1通(候補者がいる場合)

※身分証明書は、本籍地の役所が発行する破産宣告を受けていない旨の証明書のことです。

  • 申立書付票
  • 本人に関する報告書

また、費用としては以下のものがかかってきます。

  1. 収入印紙 
  2. 切手 
  3. 登記費用 
  4. 鑑定費用

任意後見制度とは

任意後見制度とは、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と、後見する「任意後見人」を、公正証書で決めておく制度です。 

なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を、家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります。
この際、任意後見監督人は本人が選んだ任意後見人がきちんと仕事をしているかチェックします。 

任意後見契約においては任意後見人を誰にするか、どこまでの後見事務を委任するかは話し合いで自由に決めることができます。
上記の内容を公証人役場で公正証書を作成する必要があります。

任意後見のメリット

  • 成年後見等の法定後見制度のように今現在、本人に判断能力の低下がなくても利用することができること
  • 契約内容が登記されるので任意後見人の地位が公的に証明されること
  • 家庭裁判所で任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の仕事ぶりをチェックできること

などの良いところがあります。

任意後見のデメリット

  • 死後の処理を委任することが出来ない
  • 法定後見制度のような取消権がない
  • 財産管理委任契約に比べ、迅速性に欠ける
  • 本人の判断能力の低下前に契約は出来るが、実際に管理は出来ない 

良い点悪い点をしっかりとおさえて、任意後見をするかしないかの判断をすることをお勧めします。

後見人はどのように選べばよいか

法定後見の場合後見人は家庭裁判所が選任します。 
しかし、後見開始審判の申立書には、後見人の候補者を記載する欄があり、ここに候補を記載しておけば考慮してもらえます。

ただし、家庭裁判所の家事調査官が調査して、相続関係等から不相当であるとの判断がされると、候補が記載されていても別途選任されます。 
候補が記載されていないときは、家庭裁判所が司法書士などから適任者を探して、選任されます。

また、後見開始の審判申立書に書く候補者を誰にするべきかについては、人によって考えが異なります。
過去の例では、子供や兄弟、配偶者等の親族がなることが多いようです。

理想的なのは、

  • お金に関して絶対の信頼をおける方
  • 面倒見の良い方
  • 近所で生活している方
  • 本人より若い方

でしょう。

最近は、身上監護は親族、財産管理は司法書士が担当するという「共同後見」や、法人自体を後見人にする「法人後見」が増えてきつつあります。 
財産管理が中心になる場合は、第三者が客観的な立場で管理した方が望ましい場合も多いのでしょう。

また、相続人が複数存在する場合も、共同後見として、話し合いで後見事務を行うのがよい場合もあります。 
任意後見の場合は法定後見の場合と異なり、自分で自由に後見人の候補者(任意後見受任者)を選任することができます。

ただし、以下の人は欠格事由に該当しますので、後見人にはなれません。

  1. 未成年者 
  2. 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人 
  3. 破産者 
  4. 行方の知れない者 
  5. 本人に対して訴訟をした者、その配偶者及び直系血族 
  6. 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者 

身上監護が中心であれば、親族や社会福祉士等の方がきめの細かい後見ができるかも知れませんが、財産管理が中心であれば司法書士の方が適切な管理ができるかもしれません。 

注意をしなければならないのは、後見人にも将来何があるか分からないことです。
平均寿命が長くなっている現状を考えると、最も安心なのは、信頼できる法人を後見人にする「法人後見」だと思われます。 

現在法人後見を実施しているのは、全国的には、司法書士会が設立した(社)成年後見センター・リーガルサポートがあります。

財産管理委任契約とは

財産管理委任契約とは、自分の財産管理や生活する上での事務について、代理権を与え、委任する契約です。任意代理契約とも呼ばれます。

財産管理委任契約の特徴は、

  • 当事者間の合意のみで効力が生じる
  • 内容を自由に定めることが出来る

ということでしょう。

財産管理委任契約と成年後見制度の違い

判断能力の減退があった場合に利用できるのが成年後見であり、財産管理委任契約は特にその制限がない点が大きな違いです。
また、裁判所が間に入ることなく、当事者間で自由に設計出来る点も異なる部分でしょう。

すぐに管理を始めなければならない場合、判断能力が徐々に低下するその前から管理を継続させたい場合、死後の処理も依頼したい場合などに有効な手段といえます。

財産管理委任契約のメリット

  • 判断能力が不十分とはいえない場合でも利用できる
  • 開始時期や内容を自由に決められる
  • 本人の判断能力が減退しても、契約は当然に終了せず、特約で死後の処理を委任することも可能

財産管理委任契約のデメリット

  • 任意後見契約と異なり、公正証書が作成されるわけではなく、後見登記もされないため、社会的信用が十分とはいえない  
  • 任意後見制度における任意後見監督人のような公的監督者がいないため、委任された人をチェックすることが難しい
  • 成年後見制度のような取消権はない

以上のことをしっかりとおさえたうえで、財産管理委任契約の判断をしましょう。 

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、葬儀や埋葬に関する事務を委託する契約のことで、委任者が受任者に対し、自分の葬儀や埋葬に関する事務についての代理権を与え、死後の事務を委託する委任契約のことです。 

遺言で葬儀や法要のやり方を指定する方もいらっしゃいますが、これは法定の遺言事項にあたりません。
遺言者の希望ということで、遺産の分配等に関する条項に続く付帯事項としてなされることになります。 

葬儀のやり方を具体的に指定したり、散骨等を埋葬の方式として指定したりする場合には、実際に葬送を行うことになる人々との話し合いや準備をしておくことが重要です。

一方で、この死後事務委任契約は原則として委任者の死亡によって終了しますが、委任契約の当事者である委任者と受任者は、「委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意」をすることができますので、委任者は受任者に対して短期的な死後の事務を委任することができます。 

晩年の身上監護と財産管理を万全なものとしたうえで、死後の相続、相続財産の管理、または処分および祭祀の承継に紛争を生じないようにするために有効だと言われています。

確実に行われるようにするために、遺言で祭祀の主宰者を指定しておく、遺言執行者を指定して、その遺言執行者との死後事務委任契約を締結する方法も考えられます。

契約内容の注意点

費用の負担について明確にしておく必要があります。
任意後見人・成年後見人等は、ご本人が死亡した時点でその職務が終了しますし、見守り契約のみの場合では、死後の事務を行うための財産的裏付けがなく、葬儀費用等の支払いを行うことができなくなります。

遺言で祭祀の主宰者に、「遺言者の葬儀費用に充てるために、金○○円を預託してあり、それを使用して下さい」と指定することも可能です。

ご本人がご希望される内容にて、その費用分を明確にし、その預託金として預けたとしても、相続財産に混在してしまう危険性や、預託が長期にわたる場合には、不正が発生することを事前にご理解して頂く必要があります。

また、80歳まで契約可能な保険を活用される方も増えており、生前予約された分の保障を保険とお考えのようです。

亡くなった後の事務手続き

  • 委任者の生前に発生した債務の弁済
  • 委任者の死後の葬儀、埋葬もしくは永代供養に関する債務の弁済
  • 賃借建物の明け渡し、敷金もしくは入居一時金等の受領
  • 親族関係者への連絡
  • 家財道具や生活用品の処分に関する事務

それぞれを必要に応じて行うことも可能です。「任意後見契約」「見守り契約」「死後事務委任契約」「公正証書遺言」を含めて、検討されることをお薦め致します。

暦年贈与と連年贈与

贈与税は、もともと相続税の補完として位置づけられていたため、相続税よりも税率が高く、有効な手段ではないと勘違いしている人が多いようです。
確かに税率は高いのですが、年110万円の基礎控除があり、年数をかければ、節税の効果も出て来るのです。

例えば、子供が二人いて、20年かけて、限度額の110万円まで贈与を毎年すれば、4,400万円までの財産は税金がかからないのです。 

とは言え、最初から4,400万円の贈与をする意図と税務署にみなされると、初年度に4,400万円全額の課税がされるため、注意が必要です。
これを「連年贈与」と呼びますが、贈与税は税率が高いので、多額の税額が課されてしまいます。

連年贈与とみなされないためには

先述のように、ある程度年数をかけて贈与をしていく場合、連年贈与認定を避けるようにしなければなりません。
そのためには下記のことを注意して、進める必要があります。 

  • 贈与契約書を贈与の都度作成する
  • 110万円を超える贈与をして贈与税申告をするなど、記録を残す(贈与を受ける方ご本人の口座に振り込む)
  • 毎年違う時期に、毎年違う金額、違う種類の財産で贈与を行う等、単発の贈与であることを強調する。

相続税と贈与税の税率の差額を利用する

より財産が多い方、贈与に年数をかけられない方は、年110万円の贈与では、全体に対するインパクトが少ないと思われるかもしれません。
この場合、金額によっては、相続税より贈与税の税率が低い部分があるため、その適用範囲において贈与を行うことで、節税効果を大きくすることも可能です。

もちろん、事前に税理士に試算してもらった上で、実際の贈与額・贈与を行う年数等は、資産の内容、現金の有無、キャッシュフロー等を勘案して、個別に考えていかなくてはなりません。

当センターでご案内が可能ですので、ご遠慮なくお問合せください。

相続時精算課税とは

相続時精算課税とは、65歳以上の両親から20歳以上の子への贈与(住宅取得資金の場合にはについては「65歳以上の両親」の制限なし)、2500万円まで贈与税がかからなくなる、というものです。

相続時精算課税を選択した贈与者ごとに、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産評価額から2,500万円(累計2,500万円に達するまで複数年で控除が可能です)を控除した残額に対して贈与税がかかります(贈与税の期限内申告書を提出する場合のみ、特別控除することができます)。

また、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。
2,500万円を超える部分には、一律に税率20%で贈与税が課税されます。

ここで支払った贈与税は相続税の前払いの性格を持ちます。
将来相続が発生した時に、相続時精算課税制度により贈与をした財産は、相続財産に含まれ相続税が課税され、贈与税を支払っている場合には、その贈与税額を相続税額から差し引くこととなります。

相続時精算課税制度を適用する場合は、贈与者及び受贈者に下記の要件が必要となります。

財産を贈与した人(贈与者)・・・・・・・・・・65歳(注1)以上の親
財産の贈与を受けた人(受贈者)・・・・・20歳(注1)以上の子である推定相続人(注2)

(注1)年齢は贈与の年の1月1日現在で判定します。
(注2)子が亡くなっている場合、20歳以上の孫を含みます。

「相続時精算課税制度」を一度選択してしまうと、従来の「暦年課税制度」には戻せません。

相続時精算課税制度と暦年課税制度との比較

  相続時精算課税制度 暦年課税制度
贈与者 65歳以上
(住宅取得資金の場合には制限なし)
年齢制限なし
受贈者 20歳以上の贈与者の推定相続人
(子、もしくは孫)
年齢制限なし
基礎控除 限度額2,500万円を複数年にわたって利用
(住宅取得資金の場合には3,500万円)
年110万円
(毎年利用可)
税率 一律20% 10%~50%(6段階の累進課税)
相続時の取扱い 相続開始前3年以内の贈与財産は、贈与時の価額で相続財産として加算します。相続財産として加算された贈与財産に対応する贈与税額がある場合には、相続税額から控除し、控除しきれない部分は切り捨てます。 贈与財産を贈与時の価額で相続財産に合算して相続税を計算し、相続税額から相続時精算課税による贈与税額を控除します。控除しきれない贈与税は還付されます。

住宅取得資金の特例

住宅取得資金の特例は、平成15年1月1日から平成21年12月31日までの間に20歳以上である子が親から住宅取得等資金の贈与を受け、その資金を贈与を受けた年の翌年3月15日までに相続時精算課税選択の特例の一定の家屋の取得又は一定の増改築に充てて、その家屋を同日までに居住の用に供するか又は同日後遅滞なく居住の用に供した場合には、相続時精算課税を選択することができ、2500万円の相続時精算課税の特別控除額のほかに、1000万円の住宅資金特別控除額を控除することができます。

住宅取得資金贈与の特例を受けるための条件

贈与を受ける人の条件

  • 住宅取得等資金の贈与者の直系卑属である推定相続人であること
  • 住宅取得等資金の贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者であること
  • 贈与者の無制限納税義務者であること

贈与をする人の条件

  • 贈与を受ける人の父母、または祖父母の いずれかであること 
  • 贈与者の年齢要件はありません。

※夫婦でそれぞれが贈与を受けることも可能です。

取得する住宅の条件

・床面積が50平方メートル以上であること 
・購入する家屋が中古の場合は、家屋の構造によって制限があります。
 ⅰ.マンション等の耐火建築物の場合は、その家屋の取得に日以前25年以内に建築されたものであること。
 ⅱ.耐火建築物以外の建物の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。
  ただし、平成17年4月1日以後に取得する中古住宅の内、一定の耐震基準を満たすものについては、建築年数の制限はありません。
・床面積の1/2以上に相当する部分が専ら居住用であること

贈与税額の計算(暦年課税)の特例

平成17年12月31日までに、両親などから家を建てる目的の資金を贈与してもらった場合、贈与税が軽減されます。
贈与税が非課税となる金額も60万円から年間110万円、5年間で550万円に増額され、不況の現在も軽減が計画されているようです。
昔は、初めての家づくりを応援するものでしたが、ここ最近は買い替え、建て替え、増改築(工事費1,000万円以上または床面積が50平米以上増加するもの)でも、上記の特例が使われるようになっています。
つまり、550万円までの贈与であれば、住宅取得資金であれば税金がかかりないということになります。

この贈与の特例を受けるために、「贈与を受ける人の条件」「贈与をする人の条件」「取得する住宅の条件」をクリアする必要があります。
また、確定申告と同時に申告する必要があります。

贈与を受ける人の条件

  • 贈与を受けた年の合計所得金額が1200万円(給与所得の場合は約1442万円)以下
  • 贈与を受ける前5年以内に贈与を受ける本人、またはその配偶者の所有する住宅に住んだことがないこと
  • 以前にこの特例を受けたことがないこと
  • 金銭の贈与を受けた翌年の3月15日までに新築して居住すること

贈与をする人の条件

  • 贈与を受ける人の父母、または祖父母の いずれかであること

※夫婦でそれぞれが贈与を受けることも可能です。

取得する住宅の条件

  • 床面積が50平方メートル以上であること
  • 店舗などの併用住宅の場合は床面積の1/2以上が居住用であること

特例を受けたときの贈与税額

贈与額 通常の贈与額 特例を受けた場合の贈与額
100万円 0円 0円
300万円 21万円 0円
550万円 84万5千円 0円
1000万円 260万5千円 45万円
1500万円 505万円 105万円
2000万円 714万5千円 260万円

夫婦間の贈与

夫婦間の贈与の特例は、一定の条件を満たせば、2,110万円まで贈与税が発生しないという配偶者控除が受けられるものです。
婚姻期間が20年以上の夫婦で、贈与の対象が居住用不動産であること以外に、いくつか条件があります。

特例を受けるための適用要件

夫婦間贈与における配偶者控除を受けるためには、以下の条件を満たすことが必要です。

  1. 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
  2. 配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること。または国内の居住用不動産を取得するための金銭であること
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産、 または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

※配偶者控除は同じ配偶者の間では一生に一度しか適用を受けることができません。

適用を受けるための手続

以下の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要となります。

  1. 財産の贈与を受けた日から、10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本
  2. 財産の贈与を受けた日から、10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
  3. 居住用不動産の登記簿謄本又は抄本
  4. その居住用不動産に住んだ日以後に作成された住民票の写し

ただし、戸籍の附票の写しに記載されている住所が居住用不動産の所在場所である場合には、住民票の写しの添付は不要です。

配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲

贈与する居住用不動産にも、ある程度の条件が求められます。

■贈与を受けた夫や妻が住むための国内の家屋、またはその家屋の敷地であること(居住用家屋の敷地には借地権も含む) 

■居住用家屋とその敷地は一括して贈与を受ける必要はなく、居住用家屋だけや居住用家屋の敷地だけの贈与を受けることも可能。
この居住用家屋の敷地だけの贈与を受けるときには、その家屋の所有者が次のいずれかに当てはまることが必要です。 

(ア) 夫または妻が居住用家屋を所有していること
(イ) 夫または妻と同居する親族が居住用家屋を所有していること

※ 敷地の贈与を受ける場合には敷地の一部の贈与を受けることができます。
※ 居住用家屋の敷地が借地権のときに金銭の贈与を受けて、地主から底地を購入する場合も認められます。

不動産価格の算定

  1. 建物に関しては、市区町村で発行される固定資産評価証明書の価格を基準とします。
  2. 土地に関しては、路線価から算出された価格を基準とします。 

負担付死因贈与契約

贈与する人と、贈与を受ける人との合意内容を契約で交わすのが死因贈与契約です。
贈与する方の意向を、贈与を受ける方は合意しているとみなされますので、贈与した方が亡くなった後、その意向を放棄することが出来ないのが特徴です。

これに対して、実は遺言書は執行者を付けたとしても、相続人全員が遺言書に反する内容で協議し、合意した場合、無理矢理実行させることは出来ません。
もし、意思を確実に実現したい場合は、死因贈与契約も有効と言えます。

さらに「負担付」というのは、贈与をする方が、贈与を受ける方に、何らかの義務・負担を強いることです。
贈与を受けた方は、相続が発生するまで、その義務・負担を全うし、利益を受けるということになります。

具体的には、”今後の身の回りの世話を続けて欲しい””同居して面倒を見て欲しい”といったケースが多く、遺言書よりも実行度合が強く、成年後見よりも自由度が高いという意味で、使い勝手の良い制度になっています。

負担付死因贈与契約の注意点

死因贈与の手続きにおいて、注意をしなければならないのは、契約内容の実行に疑問が発生したり、相続人間でトラブルが出ないようにしておくことです。
契約内容を明確に記載しておくことが大切で、

  • 贈与の対象資産
  • 負担の内容

が特に重要です。

資産が不動産の場合は、登記簿の記載に従って正確に記載しましょう。
また、預貯金は「銀行名」「口座の種類・番号・名義人」を明示します。

死因贈与契約も遺言書と同様に、執行者を指名することが可能です。
通常、死因贈与契約の内容は、他の相続人と利害が対立することが多いため、司法書士などの専門家を指定しておけば、執行が確実に進められることでしょう。

負担付死因贈与契約に、公正証書を利用する

死因贈与契約というのは、一般的な贈与契約と同じ類のものであり、書面になっていないと、贈与をする方が撤回することが可能です。
贈与を受ける場合、負担をするわけですから、撤回されないために書面にしておくことが大切です。

ちなみに、死因贈与という存在が法的にあるわけではありません。
言葉として定着しつつありますが、一般的な贈与に「贈与者の死亡により、その効力が生じる」という条件合意が付いているだけです。

贈与契約書には公正証書を利用するのが最も安全かつ確実と言えるでしょう。

負担付死因贈与契約の取り消し

負担付死因贈与の取り消しについては、その負担が履行されたかどうかで、大きく違ってきます。
まず、負担が履行されていない場合、遺贈の取り消しの規定により、取り消すことが可能です。
また、負担のない死因贈与契約の場合は、これもいつでも取り消すことが可能です。

しかし、負担が全部または一部履行された場合は、原則として取り消すことができません。
ただし、取り消すことがやむをえない「特段の事情」があれば、遺贈の規定により取り消すことができます。

死因贈与契約の特徴を端的に整理すると、

  • 贈与を受ける人の承諾が必要
  • 契約とともに権利義務が発生する
  • 原則として取り消し・一方的な破棄は不可

となります。

遺言書における遺贈とは異なる法律行為です。
贈与する方が亡くなった場合、効力が発生するのですが、ご自身の財産を処分することになりますので、意思が明確であることが条件になるでしょう。
書面がしっかり作成されていれば、贈与を受ける人も承諾しているため、遺贈よりも実行性に優れていると言われているのです。

ただし、遺言書と同じように、遺留分減殺請求の行使は受ける可能性があります。遺留分を考慮した設計が必要となるでしょう。

まずはトラブルを防止する

トラブルを予防するために効果的な方法の一つが、生前贈与です。 
生前贈与は生きているうちに自分の意思を明確にするという意味では遺言と同じ効果がありますが、遺言と異なるのは、ご自分の財産を実際に与えるという行為を伴うことです。

贈与者本人は自分の意思で与える事を確実にすることができ、また贈与時点においてその理由や気持ちを直に伝えることも可能ですし、それを受けた人も、感謝の気持ちを直接伝えることができます

相続税は、基礎控除・配偶者に対する税額減税措置・小規模宅地の特例、などさまざまな軽減策が取られているのが特徴ですが、相続時精算課税制度を選択することも有効です。 

これは贈与者が65歳以上の親で、受遺者が20歳以上の子である推定相続人のである場合に、贈与財産の価額から特別控除として受遺者ごとに2,500万円が、相続時に精算される制度です。

遺言の効用

そもそも相続財産は、遺言者本人の物です。 
生きている間はご自分が自由に処分できたはずですし、ご自分の死後、財産を誰にどの位譲るかも、遺言者の自由です。

ですから遺言は遺言者の最終意思として最大限度に尊重され、その意思が明確な場合は、相続人はその意思に従って財産の分配を受ける事になります。
相続人は遺言者の意思に反する財産争いをすることはできないはずです。

遺言ではご自分の意思にて財産の配分等ができますが、遺言には方式や要式に規定があります。
法的な不備があると遺言をする意味がありませんので、財産の内容やそれをどのように分割できるかや、遺留分への配慮などについては、事前にご理解した上でないと逆効果になりかねません。

配偶者がいる方は、一旦一切の財産を配偶者に相続させるとの内容と、付言のその配分をした理由や心情を記載した遺言を残されることをお薦め致します。

相続税の納税資金の考慮

相続対策でこれまでよく採用された方法に、無理な借金により、貸しマンションやアパートの建築をして財産評価額を下げるという方法があります。
この方法には一定のリスクが伴い、納付する相続税額を節税する対策は危険だと言う専門家も少なくありません

そういう意味では、財産評価額を下げる対策ではなく、納税資金に換価できる資産、不動産を用意することによる、納税資金準備対策が重要でしょう。 
換金性を高めた資産などを生前から準備しておき、相続発生後に直ちに換金することで相続税を納付しようとするものです。
特に換金しにくい不動産等を換金化しやすいような資産構成に代えておくことが代表的です。

例えば、すぐに売却できるような更地で持っておくこと、その間有効な活用をすることが挙げられます。
注意点は、相続税課税時点において、納税義務者(特に奥様などの配偶者)に、換金性の高い資金が分配されるような配慮を、遺言書で記載しておくことです。

資産を残す側が、困りがちなケースを想定して、最低限やっておかなければならないことと言えるでしょう。

というのも、換金性の高い資産でも、保有している土地取引に時間がかかってしまうことが多く、譲渡所得税等の発生もあるからです。 物納する場合も物件自体が物納要件を満たしていることが求められ、更に認可手続に時間がかかります。
しかも、物納認可が下りないといったケースもあり、これは大きなリスクです。

そこで、相続税の納税のための資金準備をしておく必要性が発生するのです。

納税資金が足りない場合の対策

納税資金対策として、よくご提案させていただいている方法をご紹介します。 短期的なものとしては、

  1. 銀行から借入する
  2. 死亡退職金・弔慰金を活用
  3. 相続資産の売却
  4. 納税資金の生前贈与
  5. 延納・物納を利用する 

があります。

ただし、短期的というのは、狙ってそうするのではなく、結果的にその必要性があったということが大半です。
出来る限り計画的に、長期的な視野で取り組まれることをお薦めします。
長期的な対策として、計画的に取り組めることの代表例を挙げると、 

  1. 生命保険に加入する
  2. 土地活用により賃貸収入を得る
  3. 賃貸用不動産を譲渡する

どれも専門家にアドバイスを求めた方が無難な対策です。
信頼できるアドバイザーを探しましょう。

納税資金の過不足分析

必要となる納税資金に対して、相続財産と相続人所有の金融資産(現預金・生命保険金・上場有価証券等)がいくら準備できるかを試算し、相続税を支払う能力があるかチェックすることが出来ます。
不足していれば、対策が必要でしょう。

一般に、相続税の支払能力の判定は、
納税資金÷相続税×100
で求めます。

この比率が100%よりも小さければ小さいほど対策が必要です。
納税資金の不足を解消するためには、

  1. 節税対策により相続税額を軽減すること
  2. 納税資金対策により資金を増やすこと

の両面からのアプローチが必要です。

納税資金対策では「生命保険」の上手な活用が最も有用です。
終身保険の有期払いで加入すれば、確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当できます。
支払保険料は相続税の分割前払いと考えることもできます。

これにより、所有土地等を譲渡または物納することなく、相続税の納税を完結させることもできます。

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